コラム「有用な『内部統制』を実現するために」
2006年11月28日 公開
弘希総合法律事務所 弁護士 今尾 元彦
第2回 形式だけの「内部統制」のリスク
内部統制の「実質化」の必要性
新会社法施行に伴い、いわゆる大会社ではほとんどの会社が「内部統制」システムを導入したことと思いますが、せっかく導入した「内部統制」システムも適切に機能していなければ、リスクマネジメントとしての意味をなしません。形式的に導入しただけで満足し、実質的な運用への配慮をせずに放置することは、防げたかもしれないリスクを発生させてしまう結果となります。
例えば、平成16年に土壌汚染隠ぺい事件で大きく新聞報道もされた三菱地所は、平成9年に総会屋への利益供与事件を機に「渉外管理室」を設置し、同11年には社内通報窓口として「ヘルプライン」を設けていました。しかし、土壌汚染隠ぺいについての通報はまったくなされないまま、平成16年に行われた警察の家宅捜索により土壌汚染隠ぺいの実態が社会に公表され、事態は関連会社の営業停止処分や取締役の引責辞任にまで広がりました。
同社は、この事件を受けて、新たに「コンプライアンス特別委員会」を設置しましたが、従来から設置されていた「ヘルプライン」が適切に運用され、積極的な利用がなされていれば、未然に損害の拡大を防止できた可能性のある事案のように思われます。
「内部統制」システムの一つとして内部通報制度の充実が挙げられますが、本件で問題となっているように、形式的に相談窓口を設けてみても、匿名性への信頼を確保する等、従業員の方々が通報しやすい環境を整えなければ、積極的な利用がなされず、本件のように、リスクに対する効果的な予防になりません。
したがって、会社としては、「内部統制」システムをつくった後も、利用する現場の声に絶えず耳を傾け、積極的な利用を促すための諸方策について会社の実情にあわせて工夫を重ね、システムを柔軟に「更新」していく必要があります。
「内部統制」システムの内容
会社法が要求している「内部統制」システムとは、きわめて大ざっぱにいえば、従来より監査役が行うべきとされてきたいわゆる適法性監査が実際は形骸化しているという現実をふまえ、これを実効化させるための諸制度の総称と言い換えることができるように思います。
次回は、内部統制システムの具体的な内容を整理してみたいと思います。
