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ボサノバのように
[金澤 貴司]

先日、ラッパ屋という劇団の「ブラジル」という舞台を観て来ました。

ストーリーは、大学の軽音楽同好会のOB会で年代も職業も違う
かつて青春を共にしたボサノバを愛する11人の仲間たちの物語です。

舞台は千葉・外房海岸のペンション。

昔を懐かしみ、笑い合い、語り合う事を楽しむハズだった彼らに、
複雑な恋愛問題や成功と挫折の苦悩、引いては忍び寄る死の不安など
様々な問題が襲います。

笑いがあり、悲しみがあり、未来があり、過去がある。

それらが入り乱れる青春群像劇な訳ですが、
人物設定がうまい。

11人の置かれた立場がきちんと書き分けられ、それぞれの個性が際だっており、
さながら今の日本社会の縮図のよう。

役者さんを1人も知らなかったのですが、人間関係がすっと頭に入ってくるのは
人物設定の妙でしょう。

2時間超に及ぶ舞台なのですが、全く時間の流れを気にさせる事なく、
見事に走り抜けてくれます。

観る物には重いテーマを投げかけながらも笑いが絶えないのは、
切実でありながらも卑屈にならず、前向きに進もうとする彼らがいるから。

つくり手の、「悩みはあっても最後は何とかなるよ」という楽天的なメッセージを
誰もが感じられるからでしょう。

ここで展開される11人の悩みは、普通に誰もが抱えるものです。

だからこそ、一歩間違えればその重さが心に影を落とし、
笑いなど起きなくなってしまうところです。

それをこの劇団は、そういった中年男女が抱える悲喜こもごもの人生模様を
ブラジル発祥の音楽、ボサノバの軽妙なリズムに乗せて描き、
苦悩の一切合切を飲み込みながらほのかに爽やかな結末へと導いています。


お見事!

観終わった後、舞台の内容を振り返りながら色々と考えていたのですが、
「コレだな」と思いました。

目の前に立ちはだかっている問題の壁は分厚く、ともすれば逃げ回りたくなるような
大きな問題なのですが、それでも「なんとかなるさ」という楽観的なムード。

そう、ムードが大切なのです。

現実的に何もせずに「なんとかなる」と放っておくのではなく、
やれる事をやった上で最終的な心持ちとして「なんとかなるよ」と思う事。

こういうムードが余裕を生んで、来るべき時への大きな備えになるのではないでしょうか。

そして、今のマスメディアを見ていると、そのムードが無い。

新聞でもテレビでも、「戦後最悪」や「百年に一度の・・・」といった
ネガティブワードの大売出し。

確かにそうかもしれない。

そしてそれを伝える事はマスメディアの使命でしょう。


でも!

でも、必要以上にその事実を伝える事で、
回復に向かう芽さえ摘んでしまっているように思うのです。

今の現状を把握していない人はそういないでしょう。

おそらく、ほとんどの人が、感覚として不況の真っ只中に居る事は分かっていると思います。

危機感も高まっているでしょう。

だからこそ、楽天的なムードが欲しいのです。

「今はかつてない程に世界はどん底だけど、まあ、なんとなるよ」
と言って欲しいのです。

それはつまり、希望が欲しいのです。

今はダメでもきっと良くなるという希望が。

そして、そういうムードをつくる事こそマスメディアが果たせる大きな役割ではないかと思う訳です。

長々と思った事を書き連ねましたが、
まあ、何より僕自身にそういったムードが必要だなぁ、と思ったりしています。

やれるだけの事をやって、後はのんびり構える。

そう、ボサノバのように。

先ずは、自分自身の中でそれが出来るよう明日から頑張っていきましょう!

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