涙の味
[金澤 貴司]
最近、いつ泣きましたか?
歳を重ねるにつれ、僕らは涙を流さなくなります。
それは、悲しい事にも耐えられる強さを持ったからなのか、
それとも心が鈍感になったのか。
理由は何にせよ、子供の頃のように泣く事はなくなりました。
そして泣く事が少なくなった僕らは探しているのです。
レンタルビデオショップやCDショップで。
「泣ける」ドラマを、音楽を。
泣く事が恥ずかしくて嫌だった子供の頃から、
いつの間にか泣く事でストレスを解消するようになりました。
それでも、最後に嬉し泣きや悔し泣きをした日を思い出せますか?
ドラマや音楽で感動して、泣く。
恋人と別れて、泣く。
親しい人が急逝して、泣く。
おそらくそのほとんどが、悲しくて泣く類ではないでしょうか?
涙には種類があります。
悲しい時や嬉しい時は、副交感神経がよく働いて薄く水っぽい涙が出ます。
悔しい時や腹が立った時は、交感神経がよく働いて、ナトリウムの多い涙が出るのです。
そう、だから悔し涙は、しょっぱい。
涙の成分は98%が水で、残り2%はナトリウム、カリウム、アルブミン、グロブリン、
たんぱく質から出来ています。
実は、血清に近い成分なのです。
僕らは涙で感情を洗い流します。
その涙が、実は人間の身体の中で一最もキレイな体液だというのは、
実によく出来た話ですね。
さあ、歴史的世界恐慌の波に飲まれている今こそ、
僕らは涙を流す事が必要なのではないでしょうか。
レンタルショップでは借りる事の出来ない「自分」という名のドラマで、
嬉し泣きや悔し泣きの涙を。
忘れていた大切なものが、そこにはきっと、ある。