メイリオ 【フォント特集】
[大倉 健志]
久しぶりにフォントについてのエントリーです。
今回は、欧文書体ではなく、和文書体である「メイリオ」を取り上げます。
メイリオは、Windows Vista、Windows 2003 Serverから導入された新しいシステムフォントです。
Windows XPまで搭載されていた「MSゴシック」「MS明朝」とは違い、スクリーン上での可読性を高めるため、Clear Typeという技術を取り入れて設計されました。
Windows Vistaに搭載される「メイリオ」は、Sans-Serif(角ゴシック)の新フォントだ。米Microsoftが開発したフォントのスムージング技術「ClearType」に対応し、特に液晶ディスプレイで可読性が高まっている上、デザインとバランスの良さから画面上でも印刷でも「明瞭」で読みやすいという。
(「ITmedia News:2年がかりの新日本語フォント「メイリオ」」より)

これは体験した人にしかわかりませんが、Webサイトを閲覧しているときに、「MS Pゴシック」で表示されているページと「メイリオ」で表示されているページとでは、明らかに読みやすさが違います。
Macintoshにおいては、Mac OS Xが登場したときに「ヒラギノ」書体が搭載され、美しい日本語が表示されると話題になりましたが、メイリオの登場によってWindowsも日本語表示環境がMacintoshに追いついたと言えるでしょう。

このメイリオのデザインに関わった日本人に河野英一氏がいます。
河野氏は、イギリス在住のグラフィックデザイナーですが、ロンドンの地下鉄で使用されている「New Johnston」という書体をデザインされた方でもあります。

New Johnstonは、一目でロンドンの地下鉄と認識させる、視認性と可読性を備えた優れた書体の一つです。もともとの「Johnston Underground」をリニューアルすることによって、ロンドン地下鉄に関係するすべてのグラフィックに「New Johnston」を使用できるようにしました。
このようなすばらしい実績を持つ氏がデザインしたメイリオは、日本語圏におけるディスプレイフォントの歴史を転換することになるのでしょう。
しかし、そのメイリオも賛嘆の声ばかりではありません。それは元マイクロソフト日本法人CTOの古川亨氏のブログに掲載された河野氏のコメントにも現れています。
こうして完成したメイリオ v1.0 は、通常のフォントファイルにインストールする通常のフォントとして作成されたもので、初めから OS に組込まれるつもりで作られたフォントではありません。そのメイリオ v1.0 がスクリーン上の可読性の良さを買われて中途から OS 用にまでスカウトされたのは大変うれしいことでしたが、意外にも我々作成者グループの手元から遠く引き離されてしまったのはまったく残念なことです。そのため、タイポグラフィの基本である可読性や洗練された美しさで目に心地さを与える微妙な調整もあまり施されず、荒削りな v1.0 のままで表舞台に押し出されてしまったのが現状です。
(古川 享 ブログ: マイクロソフトのテレビCM、メイリオ書体で再投稿します。)
メイリオの完成度については、さまざまな意見がありますが、今後のブラッシュアップに期待するとともに、Windowsにおけるフォント認識の変革につながっていけばよいなと痛感します。
コンピュータ上の文字も、印刷される文字と同じく美しく表示する。
それは、単に可読性を高めるだけではなく、作業効率の向上につながり、人々の文字への意識を変革させることにつながるのだと思います。
書体の力は、目に見えずとも、大きなものであるからです。
河野英一氏についてくわしく知りたい方は、「日刊デジタルクリエイターズ」というメルマガに2001年9月に取り上げられた記事がありますので、こちらをご覧ください(→日刊デジタルクリエイターズ 932号「河野英一さんをご紹介します」)。