クライシスマネジメント
[臼井 友章]
日興コーディアルグループの不正会計問題で、グループの社長と会長が辞任しました。
企業の上場にも関与する証券会社の不正会計問題ですから、影響は大きく、証券取引等監視委員会から過去最大の5億円の課徴金勧告を受けたのもうなずけます(それまでの最高額は、TTGの1億3133万円)。
同社は監視委から不正会計の指摘を受けた際に、一社員の事務処理ミスが発端であると主張し、それを譲らなかったと報道されています。真偽のほどは定かではありませんが、会社ぐるみの不正ではなく、一社員のミスであると主張するのであれば、より慎重な対応が必要ではなかったかと思います。
世論は問題を矮小化して発表した後に、事態が拡大すると、実態以上に問題を過大評価しがちです。安全性に問題がなかったにもかかわらず、無認可の食品添加物を使用していたことを隠ぺいしたがために問題が大きくなったダスキン事件の例をみても、初期段階の対応の失敗がその後の企業活動に大きな影響を与えてしまうことが明らかであるといえます。それだけに、世論からみて「狭く」「小さな」事象に原因を求めるのであれば、いったん「詳細については調査中ですが、世間をお騒がせしたことをお詫びいたします」といった声明を発表しておき、調査の時間を確保しながら、事実調査を徹底して行うなどの対応をとる必要があると思われます。
企業不祥事の報道に接するたびに感じるのは、企業のクライシスマネジメント(危機管理)能力の欠如です。記者会見で無意識に発した一言がどれだけの企業価値を失わせるか理解していない経営者がまだ多いような気がします。企業不祥事が発生しないように管理するリスクマネジメントも重要ですが、不祥事が一定割合で現実に発生することは避けられないことを考えれば、ある程度のコストをかけても、クライシスマネジメントを行っておくことが必要ではないでしょうか。